「田子の浦」の地名由来
2009年 02月 06日
飛んでいるから名付けられたに違いない。 ①静岡県富士市田子の浦 「田児の浦ゆ うち出でて見れば真白にぞ 不尽の高嶺に雪は降りける」(山部赤人)と詠われた名所だ。しかし、「たご」の意味や歌の内容を吟味すると、赤人の詠った「田子の浦」は、今の富士市の砂浜海岸ではなく、静岡市の由比から蒲原にかけての急崖の続く海岸線だと考えられる。歌の意味は、高い急崖(たご)のつづく「田児の浦」から東に進んだら、ぱっと開けた平野の向こうに雪をたたえた雄大な富士山が見えた驚きの感動を詠ったのだ。富士市の「田子の浦」の位置では歌の意味も通じないし、「たご」らしい地形もない。初めから富士山が見えているようでは、感動も薄いですよきっと。 ②青森県田子町田子(たっこ) アイヌ語で「高い丘」をいうそうだが、縄文以来の始源語そのままで、高いところの意味でよい。 ③静岡県西伊豆町田子(たご) 「田子」の名は、北にある「大田子」の地名が示すように、伊豆半島の山麓斜面の高いところから、海岸に向けて下るだんこのある地形を示している。沖に浮かぶ男島と女島を合わせて「田子島」といい、隣の島を漁業の神様に由来する「尊(そん)之島」というが、「尊(たか)之島」とも読めるので「田子島」と同じ由来と思う。 ④仙台市宮城野区田子 七北田川の自然堤防上にある集落で、塙(はなわ)地名と同じで、周辺部より高くなっている地形名だ。 ⑤石川県川北町田子島(たごじま) ここは、手取川の沖積平野に広がる水田地帯にあり、やはり微高地の意味だ。「高島」と同類地名。 ⑥その他 長野市田子 金沢市湯涌田子島 宮城県大崎市田子谷 福島県猪苗代町田子沼 ⑦松江市多古 多古には、多古島、多古の七ツ穴、多古鼻の地名がある。この集落は、112mの高い山を有する小さな半島にある。隣の「沖泊」は古代の日本海航路の港であり、航行する船人が、高い山の見える半島を「たか・・」と呼んだ事から「たこ」になった。 ⑧千葉県多古町多古 周囲を小田辺、豊田、割田、田町、広沼などの低湿地名に囲まれた40mほどの小高い丘に付けられた地名だ。付近には高野前、高根の名もある。 ⑨群馬県多胡町 渡来人にちなんだ「多胡碑」と関係した地名とされているが・・・・・。 (注)名古屋市昭和区滝子(たきこ)は「たっこ」が訛ったものだ。隣には「高辻」という地名があり、周辺より高くなっている。 左《名古屋市の滝子》