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地名の由来が一目でわかる!


by baba72885

「鬼」地名(その1)

○「鬼」地名と奇観                                                「ひめあざみ、ひめゆり」に対して「おにあざみ、おにゆり」があるように、日本人は小さくて可愛いものには「姫」、大きくてグロテスクなものに「鬼」をイメージしている。地名も同じで「鬼」地名の中には恐怖感や畏れを抱く巨岩や洞窟、奇怪な自然現象等につけられているものがある。 和歌山県田辺市の「鬼橋岩」は、見事な岩の架橋を見せ、奇岩怪石の渓谷美を誇る岐阜県御嵩(みたけ)町の「鬼岩公園」や荒々しい海食崖を見せる三重県熊野市の「鬼ヶ城」、宮崎県の青島や日南海岸にある「鬼の洗濯岩」等がある。熊野市の「鬼ヶ城」は岩礁の多い荒磯と奇岩の海食崖であり、本来は「鬼ヶ礁(しょう)」ではないのか。群馬県嬬恋村の「鬼押出し」は、浅間山の噴出した黒い溶岩の荒れ野だ。その由来は「火口で鬼が暴れ、溶岩を押し出した」と、噴火の様子から命名されたというが、むしろ流れ下った溶岩の不気味な岩塊の群れを目にした村人が「鬼」を連想したものだと思う。福島県田村市の「鬼穴」や岡山県真庭市の「鬼の穴」という鍾乳洞は、妖気漂う洞窟を見て「鬼」の開けた大きな口を思い浮かべたものだ。山口県秋吉台のドリーネ(石灰岩の台地にある漏斗状のくぼ地)にも、「鬼ノ穴」と名付けられたものがある。周辺のものと比べると格段に大きいくぼ地に「鬼」を感じたのだろう。秋田県鹿角市にあるカルデラ式火山「秋田焼山」の中央火口丘の火口湖を「鬼ヶ城」というが、その由来は、この異様なお釜を見て噴火当時の「岩漿(がんしょう):マグマのこと)」を想い「おにがしょう」といい「鬼ヶ城」としたのだろうか。島根県奥出雲町には「鬼の舌震(したぶるい)」県立自然公園がある。不思議な地名であるが、「出雲風土記」の伝説がその由来だという。「・・和仁(わに)の慕(した)ぶる・・」が訛って「鬼の舌震」となったとされるが、大馬木川の両岸にある柱状節理の断崖と奇岩怪石の続く幽谷は「鬼」の谷にふさわしい地名であり、ことさら「和仁」を持ち出す必要はないと思う。宮城県の鬼首温泉、北海道小平町の鬼鹿温泉の由来は、煮えたぎって渦巻く温泉を「鬼」の憤怒の形相にたとえたのだろう。                                              ○ 「鬼」と鍛冶、鉱山                                   昔から、古代製鉄法の「蹈鞴(たたら)吹き」に従事する人や、金属鉱山の採掘鉱夫の姿を「鬼」に見立てたことから、「鬼」地名は鍛冶や金属鉱山と深く関係している。岐阜県垂井町にある美濃国一ノ宮の「南宮大社(仲山金山彦神社)」は、鉱山を司り、鍛冶や金工技術者を守護する神を祀っており、本尊の絵画には「鬼」が描かれている。青森県弘前市鬼沢は岩木山の東麓にあるが、この津軽地方には古くから悪霊や疫病を除くため、氏神様に「鬼」を祀る風習がある。また、岩木山は修験道と鍛冶集団に関係した鬼と刀鍛冶にまつわる話が伝わっており、もとは「岩鬼山」であったかもしれない。なお、鬼沢の背後には鉱山を思わせる「黄金山(こがねやま)」もある。山形県鶴岡市と温海町の境には「鬼坂峠」があり、越後の鬼が安部貞任を助けに来た話と、鍛冶屋にまつわる伝説が残っている。「鬼の舌震」のある島根県奥出雲町には「鬼」がご神体の「鬼神社」があるが、ここは砂鉄の産地で、蹈鞴の栄えた場所だ。福井県越前市の「鬼ヶ岳」は麓に鬼退治の物語を残しているが、付近にはかつて水銀鉱山があった。長野県喬木村の「鬼ヶ城山」周辺にはかつて磁硫鉄鉱、閃亜鉛鉱等の鉱山があった。                                                 ○ 「鬼」と古墳                                           「鬼」の音は「隠(おん)」から来ているという考えがある。「隠」は隠(かく)れるとか、隠(こも)るということで、隠れる場所である古墳にも「鬼」の名が付けられている。また、古墳は人死の魂の宿るところだが、「魂」という字にも「鬼」が使われており、古墳と鬼の関係を示している。奈良県の飛鳥にある「鬼のまな板」と「鬼の雪隠」はセットで古墳の石室を作っていたものだ。長野県木島平村の「鬼窟古墳」、池田町の「鬼石古墳」、大分県別府市の「鬼の岩屋古墳」の名は、古墳の石室をも思わせる。他に「鬼塚古墳」が大分県国東市、玖珠町、鹿児島県長島町、長崎県諫早市、佐賀県唐津市、兵庫県神戸市、奈良県御所市等にある。                                                               左《奥出雲町「鬼の舌震」の渓谷》「舌震亭」のお母さん(大正11年生)のつくる「手作り舌震そば(800円)は絶品     右《熊野市鬼ヶ城》駐車場料金の500円はひどい!
「鬼」地名(その1)_c0134145_9391384.jpg                                                                                                                                                                                                               「鬼」地名(その1)_c0134145_8322618.jpg
by baba72885 | 2008-03-25 20:48