茨城県常総市水海道(みつかいどう)、結城市水海道(みっかいどう)、岐阜市水海道(みずかいどう)は、さまざまな表記や発音の変遷はあるものの「カイト」集落地名と思う。「水」の字は、それぞれ湛水(たんすい)しがちな低湿地にある集落を示す。つまり、常総市水海道と結城市水海道は鬼怒川の氾濫原に立地し、岐阜市水海道は旧木曽川河道に流れる境川のつくった低湿地にある微高地にある。「カイト」集落の研究は柳田国男をはじめ、多くの先達がさまざまな説を述べているが、その定義は難しい。各地にある「カイト」集落を見ることによって、漠然とした「カイト」像が浮かんでくる。なお、柳田国男は常総市水海道は水運の重要な川港で、「御津垣内」としている。 (「カイト」集落についての諸説) 和歌森太郎 将来耕地にすることを予定して囲った土地(「世界大百科事典」平凡社) 山口恵一郎 開墾地のこと(「地名を考える」NHKブック) 柳田国男 有力者の比護のもとで住民が耕地化した土地(「地名の研究」角川文庫) 千葉徳爾 生産地として計画された区画がやがて耕地や居住地になった(「新地名の研究」古今書院) 山中襄太 組や屋敷(「地名語源辞典」校倉書房) 丹羽基二 土豪の垣の内、小集落(「地名」秋田書店) 吉田茂樹 洞とほぼ同じ意味で中世の新しい開墾地(「地名の由来」新人物往来社) 鏡味完二・明克 山間の小平地(「地名の語源」角川書店) (岐阜県のまとめ) 千葉徳爾は愛知県で816の「カイト」地名を拾ったが、岐阜県には約1250程あった。漢字の表記と呼び方から、その地域の人々の感性が類推できて面白い。ただし、たくさんの漢字表記を見ると、それぞれの漢字の意味を考える必要はない。 (用いられている漢字一覧) 垣内 垣外 垣道 垣戸 海渡 海土 海戸 海道 海登 海洞 貝糸 貝戸 貝内 外津 外道 外戸 外渡 外内 外登 皆戸 皆洞 皆渡 皆津 会所 会津 会道 谷津 谷戸 谷内 開土 開津 開戸 開所 替戸 回津 廻津 廻戸 廻道 街津 ケ市 階津 柿内 街道 下呂市金山町岩瀬ではほとんどが「~廻津」、高山市清見の池本はすべてが「~垣内」、揖斐川町久瀬では「~街道」、藤橋では「~貝戸」、坂内では「~海道」等、一定の地域ではほぼ同じ表記である。「~ケ市」は郡上市白鳥町に「洞ケ市・西ケ市・坊ケ市」等6つもあり、市場とは関係ないことが分かる。これらの漢字表記はその持つ意味はほとんどないと思われる。 (呼び方) かいと がいと がいど がいつ がいづ かいつ かいどう かきうち がきうち かぎうち かきのうち あいつ あいづ たにつ かきそで (参考) 群馬県中之条町古垣内(ふけいと) 埼玉県飯能市浅海道 長野県伊那市御堂垣外 松本市梶海道 愛知県豊田市貝津 三重県松阪市大垣内 和歌山県紀の川市寺垣内 奈良県十津川村玉垣内 岡山県鏡野町中ケ市 山梨県丹波山村押垣外 埼玉県川越市倉ケ谷戸 左《岐阜市水海道》
右(常総市水海道駅)