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地名の由来が一目でわかる!


by baba72885

「名倉」は「くら」地名 神戸鎮魂の旅

その文庫判地図の裏面には「平成7年2月9日購入、11日、神戸長田区を尋ねる」とメモがあった。尋ねたルートが緑のサインペンでトレースしてある。あの大震災から約1ヶ月をむかえようとしている時だ。その日は、なぜか京阪枚方市駅に車を乗り捨て、京橋からJRに乗り換えたが、東灘区住吉駅までしか電車は運んでくれない。朝から何も食べてないのに、尼崎あたりから急に腹痛におそわれてきたが、乗客はしばらく無言で歩いた後、バスに乗り換えて三宮駅に着いた。曇天のうすら寒い風の中、道筋の被災状況は都心に向かうほど甚大に思えた。我慢に我慢を重ね、いっぱいいっぱいだったが、三宮駅北側の壊れたビルの一角にあった一つの簡易トイレに救われた。神戸高速鉄道で新開地、そして神鉄有馬線長田で下車し、急な坂を下って目的地の名倉(なぐら)町に向かう。そこには、書道塾を営む知人のKさん宅がある。果たして、大きなヒビが入り、傾いた自宅には家人は無く、今にも崩れそうな壁には連絡先の張り紙がかろうじてへばり付いていた。よかった、連絡先の電話で無事を確かめ、お見舞いの言葉を掛けることができた。さて、この9日、ラジオの天気予報は太平洋岸を低気圧が東に進み、平野部では大雪のおそれがあると伝えている。しかし、神戸が呼んでいるような気がして、新幹線新神戸駅から地下鉄、神鉄を経由して小雪のそぼ降る長田区名倉町についた。ここは崖に囲まれた狭い谷や崩れやすい急斜面等の危険な場所を表す「くら」「くれ」地名の場所だ。あの時、避難場所になり、多国籍の文字がひしめくテントが張ってあった運動場はなかったが、新築された名倉小学校の校門から見下ろすと、名倉町はまさにこの地形どおりの谷に集落が密集している。名倉町を流れる苅藻川のすぐ上流は滝谷町という険しく、厳しい地名だ。上越国境にある谷川岳の「一の倉沢」や北アルプス北穂高岳の「滝谷」を思わせる地名だ。神戸では他に、須磨区高倉町、中央区大倉山公園の名が見える。全国的には、「倉・鞍・蔵・暗」や「呉・暮・久礼」等で表記される地名が多い。名倉町を後にし、サインペンのルートにしたがって南に下り、13年前の記憶をたどる。なんの変哲もない長田の町は、すっかりあの日のことは忘れ去ったのかと思いきや、頭から冷水をぶっかけられた。宮川小学校の前にかかる宮川歩道橋に『教訓は あの日のドッキリ あのヒヤリ』の黄色い横断幕が掲げてあった。その歩道橋の下を、黄緑色の市交通局のノンストップバスがスピードを上げた。長田神社を横目に、高速長田駅を過ぎ、いよいよ鮮明に記憶しているJRのガードを南にくぐった。そこには曲がりくねった鉄骨、焼け爛れた鉄板類、コンクリートの瓦礫が大火災後の惨状をそのまま見せており、一棟の建物も見当たらなかった。西にあるはずのJR新長田駅舎は無く、憔悴しきった人々が瓦礫の間を行き来していた。今、ガードをくぐり阪神高速道路を前にしても、そこには何も無かったかのように、雪が降り続いていたが、そこの吉田町バス停の脇で、思わず目をつむって手をあわせた。まもなく終点のバス停吉田町に、あのノンストップバスがやってきた、と思いきやよく見ると、乗る人にやさしいノンステップバスではないか。ここからJRの線路沿いに兵庫駅までは、1階が倒壊した家が多かったが、いたる所で車庫の自動車がぺちゃんこになっていた。今はガード下を中心に、自動車板金工場が続く。 途中、菅原通りあたりに青いビニールシートの、急造喫茶店兼居酒屋があったが、影も形もなく町の風景も一新していた。兵庫駅でやっとありついたセルフうどんをかっ込み、三宮駅の歩道橋から正面を見た。中心部に大きく斜めにヒビが入り、無残に傾いたSOGOの姿は脳裏から離れない。今、きれいにお色直しをした駅前ビルのSOGOは、13年の時の流れをいやがうえにも感じさせた。ここからまた京橋、枚方方面に向かうのか、はたまた神戸元町、大阪キタで都会を満喫するかは・・自由だー・・。大雪は新幹線を遅らせ、名神高速道路は一宮ICで通行止め、中央道は多治見まで不通で、一般道は前代未聞の大渋滞。結局帰宅したのは予定より3時間も遅れて、午後11時過ぎになってしまった。神戸が呼んでくれた大雪のこの日、確かに鎮魂の旅にはなったが、渋滞の車中では腹は減るし喉が渇く。こんなに苦労して帰る旅になろうとは、やはり神戸はなにか因縁めいている。 合掌                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 「名倉」は「くら」地名 神戸鎮魂の旅_c0134145_21423389.jpg「名倉」は「くら」地名 神戸鎮魂の旅_c0134145_1932407.jpg
by baba72885 | 2008-02-12 18:43